2021年1月24日

<第883話 其中一人>

こんばんは♪

コロナウイルスの猛威、世界でとどまることをしりませんね。
どうぞ、皆さま、お気を付け下さい。

アメリカでは、コロナによる死者が40万人を超えたと発表されています。
先週、ズームで、アメリカの方々とお話をしたのですが、その中で、ご冥福をお祈りしました。

このコロナで、自粛を言われるようになったころから、毎朝のおつとめで、『観音経』を読誦するようにしました。観音さまが人生におけるいろいろな厄難を除いて下さると書いてあるからです。

その中で、好きな言葉があります。

「其中一人作是唱言」です。

その中の誰か一人でも観音さまの名前を唱えれれば、、、

たとえば、水難や火難に遭ったとき、猛獣に襲われたとき、商人が行商に出ていて山賊に襲われた時に、一団の中の誰か一人が「観音さま~」と唱えれば、救われるという意味です。

これを自分のこととして考えると

自分の中には、いろいろな自分がいるとおもうのです。

素晴らしいなあと思える自分も、

もうちょっとしっかりしろよ!という自分も、

あららっ~~とおもう自分も、

よろこんでいる自分も、

動揺している自分も、

前向き

後ろ向き、、、

いろいろな自分のすべてが、「観音さま~」とはならなくてもいい。

どの自分でもいいから、一人でも「観音さま~」と唱えれば助けてくれるということです。

全員が、観音さまから、離れなければいい!ということです。


先日、白梅がキレイに咲いているのを見ました。

道元禅師の師匠さま、天童如浄師の言葉に

春は 梅の梢にあって 雪を帯びて 寒し

と、あります。

今年は、雪が多いです。

雪の白は、純白。

法然上人の「冬のご詠歌」に雪を詠っています。

雪のうちに 仏のみ名を唱えうれば つもれる罪ぞ やがて消えぬる

どんな罪を犯してきたのかわからないが、仏さまの名前を唱えれば、雪が積もって、すべてをきれいな白銀世界にしてくれるように、作った罪も、すぐに(「やがて」は、この時代では、「すぐに」という意味です)消えていく。

白は、聖なる色、有名な歌「エーデスワイス」もエーデル:高貴なワイス:白という意味です。

神聖な清らかな色。だから産着や花嫁衣装、死に装束に用いられていました。
昔は、喪服も白でした。

そこからまた、白は「死」をも意味します。

「雪を帯びて寒し」という世界は、「死」の只中の冬の世界。

その中から、梢、枝の先から梅の花が咲く、、、それが、「春」だと。

「春」というと、あったかい、ほのぼのとした世界をイメージしますが、

そうではなくて、「春」は、厳寒の梅の枝の先、雪のウラにあるのだ、と。

人生、生きていれば、いろんな艱難辛苦が待ち受けています。

その時、すべてその波にのみこまれる前に、どこか一人、だれか一人が

仏さまのみ名を唱えれば、「春」が必ずやってくるのです。

人生の苦難は、自分が作ったものと覚悟を決めて、真っ正面から受け止めていく。人に何と言われようが、責められようが、仏さまのみ名を唱え、すべてをおまかせして腹をくくれば、名誉・財産・地位・見栄・世間体などの欲から離れて、気がついたら「春」の世界に入れるのではないでしょうか。

南の島とか、どこかに、行くのではなく、今いる場所が、あたたかくなって、花が咲いてくる。

春は 梅の梢にあって 雪を帯びて 寒し

の言霊を噛みしめつつ、厳しい寒さ・コロナ禍を乗り越えていきましょう。

今週もお元気で!

けいくう

☆☆
ひらかば散らぬ とわの花 かおりも高く さきそむる 春まつ土の 雪のした のびる白根に 光ふる 

つらくもつらい 時ほどが のぞみをとぐる 満足で 求めてやまぬ 彼の岸へ 一と日近づく この一と日
(田中木叉上人道詠)