2022年6月12日

<第955話 ホトケさま>

こんばんは♪

日が長くなりました。

昨日、ご法事をつとめた後、ご家族のAさんから
ご質問がありました。

住職さん「ホトケ」って、何ですか?

私「ん?」

Aさん
「刑事ドラマなどで、亡くなった方のことを<ホトケ>」と言ってるし

「地縛霊が成仏した」とかも言うし

『蜘蛛の糸』では、<ホトケ>が天から地獄へ糸を垂らしているし

なんかつかみどころがないので、教えてください。

☆☆
そうですよね。

<ホトケ>って、何でしょう?

そもそも仏教は、<仏の教え>ということですから。

その仏(仏陀・Buddha)とは、「サトッタ人」という意味です。

少し詳しく言うと
Buddhaは、√Budh(知る)という動詞の過去分詞です。

サンスクリット語の文献では、√Budhは、経験的な事実を知ること、あるいは経験世界における事実に気がつくことです。
たとえば、リンゴの実が木から落ちるのに気づくというような時、√Budhが使われています。

とにかく
Buddha(仏陀)とは、目覚めた人。夢から覚めるように、無明の迷いの中から真理に触れて、ハッと目覚めた人が、<ホトケ>です。

これは、仏教の文献だけではなく、ジャイナ教でも使われていますし、もっと古い『ウパニシャッド』という聖典の中にもBuddhaは、出てきます。

真理に目覚めた人!

のことです。


ちなみに、このインドの言葉のBuddhaを「佛」と漢訳していましたが、三蔵法師で有名な玄奘はdhaがあるから、「佛陀」と訳しました。


いづれにせよ、Buddhaに「佛」という漢字を当てたのは
諸橋轍次先生に依ると、「佛」の旁の「弗」は、「あらず」という意味で、漢字では否定の意味に使われている。例えば「沸」は、液体の状態の水が沸騰して、気体になる。同じようにお釈迦さまはもとは人間だけど、目覚めて人間を超えた<ホトケ>になられたので、「佛」という字になったそうです。


それが、訓読みで<ホトケ>となったのは、学者の間ではBuddhaの他の漢訳「浮図(ふと)」から、なまって<ホトケ>となったとされますが

俗説ではあるが、いろいろな縛りから、ほどけられた方→ほとけられた方→ホトケさま
となったという方が、私的にはどこかシックリ来ます。
(*^_^*)

そして、その意味は1.慈悲深い人。2.ばか正直な人。とことん良い人。3.アホ。「知らぬがホトケ」4.亡くなった人。に意味が広がって行く。

この4.に関しては、生きている間はどんな事をしていたかはまったく関係なく、息絶えたら阿弥陀さまの慈悲に救われていくことを意味している。さらにさきほどの身体を持っていることからくる苦しみから解放された人。ホトケられた人という意味で、使われているのだとおもう。

自縛していたものから、解き放たれた状態を成仏というのも、同じ理由だろう。

☆
大切なことは、自分も目覚めたら<ホトケ>になれるということ。

それが、仏教!

目覚めを気づきと言っても良いが
まず、その第一歩は、
自分が受け取った事実と真実は、違うことをワカルこと。

真実は、一つ。

だけど、事実は、受け取る人の数だけある。

自分が受け取った事実を真実だと思い込むと、相手を受け入れる事ができない。

自分はこう受け取ったけど、アナタはいかがですか?

そして、真実は?

と、そのことに目覚めて生きていく生き方

自分に起こってきたことを受け取る、その受け取り方を学ぶのが、仏教!

<ホトケ>さまの、教えです。

アナタは、すでに<ホトケ>さまかもしれませんが、
私もいつかは、<ホトケ>さま。

私と同じようにこれから<ホトケ>になる人は
これからも、一緒に仏教を学んでいきましょう。

今週もお元気で!

ご機嫌よう。

啓空

☆☆
  大みひかりに 目覚めたる かがやく心 ほとりなく
   十方界に すきとおる いつもかわらぬ 生きどおし

  身は水のあわ きゆるとも キララ夜明けの 海キララ
   くらければこそ 気がつかぬ 永遠に輝く 大海原
                    (田中木叉上人道詠)